琉球石灰岩の塀の種類
こんにちは。石垣島ナビです。
石垣島の街中を歩いていると、琉球石灰岩を使った塀をよく見かけます。お家の塀に使われることが多い琉球石灰岩なんですが、よく見てみると同じ石灰岩でも違いがあることがよくわかります。
今回は、「琉球石灰岩の塀の種類」を紹介します。
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琉球石灰岩の塀の種類
新川周辺にある大きな琉球石灰岩の塀
石垣島の新川周辺を歩いていると、「大きな石の塀だなぁ!」と感心するほど、立派な塀のあるお家が多いです。
一つのブロックが、横1m、縦60cm、厚み30cmはあろうかというほどの大きさ。しかも、琉球石灰岩でできた塀です。何も考えずに歩いていると、見逃してしまうような塀ですが、よく考えてみると、びっくりする建造物です。
自分は西表島という離島で5年ほど生活していた経験があるんですが、ここまで立派な塀は見たことがありませんでした。西表島で、琉球石灰岩の塀というと薄いサンゴだった石を積み上げたもの。自然のまま、拾ったまんまの形のものを積み上げるだけです。
ですが、石垣島の新川周辺にある琉球石灰岩の塀は、明らかな切石タイプ。石を四角く加工して作ったブロックを使っています。しかも、でかい。
大きな切石を作るには、石を綺麗に切る<技術力>が必要になってくるので、新しい時代のものということがわかります。
昔は、石を切る時は、石にくさびを打ち込んで、割っていたので、断面が綺麗になりません。綺麗に整えようと思ったら、削れなくてはいけないので、かなりの時間が必要。
人力で行うので、相当な財力のある人しか、そんな手間ひまのかかった塀を作ることなんてできません。
石を切る技術が発達しても、これほど立派な塀を作るには、相当のお金が必要。
「お金持ちの家なんだろうな」と思いながら散歩してみました。大きな塀を探しながら散歩すると、どうも「裏通りの通り沿い」に大きな琉球石灰岩の塀が並んでいることがわかります。
特に多いのが、桃林寺〜宮良殿内にかけて、宮良殿内〜登野城七町内にかけてに多くみられます。
お家の塀になっているものだったり、中には、駐車場の塀になっているものだったりしますが、通り沿いに並んでいます。しかも、だいたい方角が同じ向きに面していることが多い。
これは、推測ですが、どうやら「桃林寺、宮良殿内の界隈は古くからのお屋敷が多かったんではないか?」と考えられます。
日本でも、お寺周辺はお金持ちのお家が多く栄えるといった歴史的な背景が見られます。石垣島でも、お役人さんが住んでいた場所と、庶民が住んでいた場所は別れていることが多いです。
昔の役場の周りは、中心地となり、お役人さんが住む豪邸が残されています。
昔の中心地が「蔵元」と言って、今の石垣市博物館の隣にある場所です。蔵元に通うために、蔵元周辺はお役人さんの家や土地を収める長の家が多くありました。
宮良殿内も「宮良」という土地を治める「長」のお家。宮良を治めているのに、お家は石垣にある。石垣島島外のお客さんを招くのにも使われたんでしょう。中心地に別宅、別荘、来客用の家みたいな意味で使われていたお家もあるようです。
そんな中心地だった場所にある石垣なので、立派なものが多いんじゃないか?と考えられます。今では、民家の塀ですが、昔は、琉球のお役人さんたちが住んでいたきらびやかな街の塀だった可能性も無きにしもあらず。
塀一つ、とってみても、歴史を考えさせられる体験になります。
琉球石灰岩の塀の種類別紹介
琉球石灰岩の塀は、タイプが何種類かに分けられます。原始的な野面積みタイプ、打込接ぎタイプ、切石を使った切込接ぎタイプ、と日本のお城の石垣に使われたような技術を見ることができます。
近年では、コンクリートの普及に伴って、コンクリートで固めるタイプの塀もありますが、塀を見て歩いているだけで、「ここの場所は、こういう歴史があるのかな?」と、ちょっと考えさせられる体験にもなります。
積み石タイプ
原始的な「野面積み」「乱積み」タイプの塀です。石垣島の家庭の塀に最も多いタイプの積み方です。古いお家だと、石と石が接着されてなく、石の出っ張りだけで組み上げられていることが多いです。
基本、積んだら、コンクリートで固めて、積み、固める…を繰り返していくと思うじゃないですか。だけど、石垣島の塀は、積む、積む、積む…という工程だけで、「固める」ってことをしない塀が多くあります。
だから、触ると石が動く。
地震なんかで崩れるんじゃないか?と思いますが、琉球石灰岩を使っているので、ゴツゴツとした表面がかっちりと噛み合って意外に丈夫。なことが多いです。
フルスト原遺跡などの塀も、固めずに、積んだタイプの塀で、戦後の街の復興で、石が足りなかった時には、遺跡の塀に使っていた石を持ってきて、街を復興させたという豪快なエピソードが残っているぐらい、リサイクル、リユースの考え方があったことがわかります。
もしかしたら、石垣島の街中にある石も、「もともとは、遺跡の塀の一部だったかも!?」なんてロマンのある石なのかもしれませんよ。
波照間島などの離島も「野面積み」「乱積み」タイプの塀が多いです。古くからある集落などは、このタイプの塀を作っていることが多いです。石垣島島内でも、波照間島から移住してきた人が作った集落「白保」でも見られる塀です。
石垣島ではないんですが、お隣の西表島まで行くと、「野面積み」「布積み」タイプというか、「打込接ぎ」というか、その中間というか。といった、平べったい石灰岩を積み上げたタイプの塀もあります。
自然と一体化している塀ですが、土が間に入っていた理、植物の根が絡まることで、より強固に補強されています。西表島は、茅葺のお家が多かった島なので、古い塀や石垣などは、特定の場所にしか残されておりません。
お役人が住んでいた集落「祖納」などでは、現在もサンゴの塀や石垣を見ることができます。自然豊かな島なので、結構荒々しく、野性味溢れる姿の塀です。
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切石タイプ
そして、今回の大きな切石タイプ。「切込接ぎ」「布積み」タイプ。基本、動かないように隙間はモルタルのような接着剤で固められています。切石タイプも様々な形があり、レンガのように積み上がったものや、積み木のように積み上げたものなど様々。
最近では石を白く漂白して、芸術性を高めているものまで見られます。
野面積みタイプよりも、技術力が必要な加工方法なので、時代は新しく、お金がかかっていることがわかります。
中には、土台だけ、琉球石灰岩の切石で、上はコンクリートブロック。といったハイブリッド型の塀もあります。
う
ちょっとモダンなデザイン。継ぎ目の模様が綺麗に作られているタイプです。
中には、表面を固めて隠してしまうタイプの塀もあります。一見コンクリートの塀ですが、解体してみると、中から琉球石灰岩が出てきた!なんて話もよく聞きます。
琉球石灰岩は、もともとはサンゴだった石なので、穴が空いていることが多いです。さらに、雨風や酸性雨など、長年雨風にさらされ続けていると、劣化してくる。
その劣化を防ぐために、表面をより強い部材でコーティングしたりもします。個人的には、「ちょっと、もったいないな」って感じますが、安全性、耐久性を考えると仕方ないなと思える補強です。
古い塀だと、穴が大きくなり、味わいが出てきます。強い衝撃を与えると崩れてしまう可能性が高いですが、古いものは、魅力があり、見ているだけでも強く惹きつけられます。
歴史を強く感じさせられる建造物でもあります。
近年作られた「切込接ぎ」「乱積み」タイプに近い塀。綺麗に積まれていないのが乱積みですが、切石を使っっているので、芸術性を高めた積み方です。実用というより、見栄え、デザインを重視した積み方です。
コンクリートで固めたタイプ
最近の建築物で多いのが、コンクリートで固めたタイプの塀です。表面は、切石の乱積みに見えるんですが、装飾用で、石を薄くして使っています。
中身はコンクリートでできているため、安価で作ることができる。耐久性も高いので、現代の技術が作り出した景色ということもできます。
安心、安全な街の一角を担ってくれているタイプの塀です。
まとめ
塀一つ、とっても作り方、作られた背景を考えると「歴史」「人々の生活」を感じることができる風景です。青い海の風景も綺麗で、最高ですが、石垣島の人々が作り出した町の風景に、目を向けてみると「思わぬ発見」もありますよ。
「昔は、こうだったのかな?」なんて考えながらの街歩き。今は無い時代に思いを馳せながら歩くと、琉球王朝時代に、タイムスリップしたような気持ちになりますね。
それじゃあ、楽しく旅してね!
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