沖縄と豚の文化
こんにちは。石垣島ナビです。
沖縄には、昔から豚肉を食べるという文化があります。沖縄の人々にとって豚肉は、欠かせない食べ物。豚と生活を共にして、豚肉を食べて生きてきた歴史があります。
今回は「沖縄と豚の文化」について紹介します。
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目次
沖縄と豚肉文化
沖縄では、昔から豚肉を食べてきた文化があります。豚肉を使った料理が多い沖縄。日常生活に欠かせないたんぱく質として、魚、豚肉がありました。
豚肉を使った料理には沖縄の方言が使われているものも多く、それだけ身近な料理であることがわかります。豚肉をつかった沖縄料理は、こちらの記事にまとめてあるので、読んでみてください。
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沖縄の気候と豚肉
沖縄は1年のうち、8ヶ月も高温多湿な機構が続きます。湿度が高いと汗をかきやすいので、どうしてもナトリウムとカリウムのバランスが崩れやすいです。
土地が痩せていて、台風の襲来や干ばつなどの被害が多い過酷な土地でした。そんな過酷な環境に住んでいるからこそ、人々は体にいいもの、体の栄養になるものを食べ続けてきたという習慣が残っています。
4世紀ごろから沖縄は中国や東南アジアと交易を始めます。当時は栄養学などない時代。「自分たちに必要な食べ物は、なんなのか?」「何を食べたらいいのか?」を考えながら生き残ってきた歴史。
お年寄りは「ぬちぐすい」といい「医食同源」の考え方、食べ物は薬である。という中国の考えかたが浸透したのも納得がいきます。
優れた知識、経験則は、外国からも取り入れる。そんな先人の知恵が見えてきます。
14世紀ごろに沖縄の島々で唯一収量が安定していたのが<さつまいも>です。地面の下に育つ作物なので、台風の被害も逃れることができ、痩せた土地でも大量に収穫できるメリットがあります。
さつまいもを主食としていたので、ビタミンC、食物繊維は豊富ですが、米に比べカロリーは3分の1、たんぱく質は5分の1しかない。カロリーを補うために脂肪、たんぱく質を摂る必要があります。
当時は、魚でたんぱく質を補っていました。ちょうど同じ時期、中国から来島した冊封使(さっぽうし)から、黒豚がもたらされることになります。
豚の伝来は、沖縄の島の人々の生活を一変させることになります。豚は、沖縄の気候と生活様式にぴったりと合う動物でした。人間が<さつまいも>を主食にし、食べ残しやさつまいもの茎を豚の餌にして飼育を始めます。
さらに、フールという豚舎を作り、生活ででた生ゴミなどを豚に食べてもらい養うという、無駄のない飼育法が定着し、さらに豚を飼う家も増えてきます。
宗教などによる肉食禁止の言い伝えなどもなかったので、行事や催事に欠かせない食材として豚食文化が沖縄の大きな柱となっていきます。
沖縄では、豚を丸々1頭食べる
食材が乏しい島ですので、「飼育した豚は、できるだけ余すことなく食べ切りたい」という考えが出てきます。頭から足の先まで食べる文化。これは、沖縄だけでなく世界に共通する食べ方で、他地域でも、動物を食べる時は無駄なく食べる文化が定着しています。
沖縄の場合、耳はミミガーの刺身や和え物に、足はテビチ汁にしたりして工夫して食べます。豚に含まれる脂肪、ビタミンB1、ビタミンB2を余すことなく食べる知恵が詰まっています。
栄養学的にも、豚の足に多く含まれるコラーゲンには、老化とともに失っていく骨と骨をつなぐ大事な栄養素でもあるし、血には鉄分、カルシウム、内臓にはビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ミネラルが多く含まれています。
沖縄の人たちの長寿と元気を守ってきたのは豚に含まれる栄養分が大きい役割を果たしているとも言えます。
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特に栄養分が多いですが、脂肪分、臭いの強い「内臓」を綺麗に臭い脂肪を落としきる調理法がかなり発展しているのが見受けられます。内臓の脂肪や臭いを落とすために、小麦粉を使って脂肪を吸着させる。脂肪とともに臭いも落とすという一石二鳥な調理法です。
柑橘系の果汁を加えて、何度も煮て余分な脂を落とし澄んだ汁に仕上げていく技術は、和食の技術を見ているような作り方です。当時の文化先進国、中国の使者を迎えるために、沖縄の文化も洗練された上品な文化である必要があった。そんな背景がチラチラと見えてきます。
沖縄の食生活と油
昔は、さつまいもが主食だったので、カロリーを補給するために油をどうやって食べるかが重要な課題でした。その影響で、沖縄の人は脂のあるところを美味しく感じます。濃い味付け(味クーター)が好まれ、脂のある素材を油を使って仕上げる料理が発達しました。
ですが、最近は沖縄でも、米が主食になり、食生活もアメリカ文化の影響で洋風に変わってきています。昔と同じように、油を使った料理を食べすぎていると、高血圧やガンなどの成人病を引き起こす可能性も出てきています。
90歳以上の人々は、さつまいもを主食として油でカロリーを補ってきた世代なので長寿なんですが、若い人たちは幼い頃からファーストフードを中心とした高脂肪、高カロリーな食事をしてきた世代なので、肥満率も過剰気味になっているのが現状です。
今は、油を加える食事よりも脂を抜く食事が求められている時代です。これからの沖縄料理も伝統を重んじながらも現代の生活に合わせた料理に変化させていく必要があるのかもしれませんね。
簡単、便利、早い調理法が重宝されていますが、長時間かけて脂肪を落としたり、栄養素を濃縮させる調理法も伝統として引き継いでいってほしい方法です。豚の脂も悪いことだけではなく、栄養学的にはオレイン酸やリノール酸などの不飽和脂肪酸も含まれています。
不飽和脂肪酸はコレステロールを正常化させたり、血管や細胞膜を強化させたりもします。沖縄に長寿の人が多いのも不飽和脂肪酸を上手に摂ってきたからなのかもしれません。
これからは沖縄料理にも、食と栄養のバランスを考えながら、食と健康を楽しむ文化がさらに発展してくれることを願ってます。
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沖縄の人の生活と豚
沖縄では、「フール」という豚舎を作り、豚に家庭で出た野菜の切れ端や、芋の茎を食べさせて飼育していました。現代では、フールが残っているお家は、ほぼないですが、昔は、エコな生活をしていたんだなぁと感心します。
フールには神様がいると言い伝えられており、夜道で火の玉を見たり、マジムン(魔物)追いかけられた場合は、家に入らずに、フールに入らなければならないと言われていました。
そうしないと魔物が家に入ってしまう。豚の鳴き声の「ブー」という声は魔除けにも役立っていたようです。
沖縄での「ウワァー」
豚は沖縄の方言で「ウワァー」と言います。正確には「ゥワァッ」と一気に息を吐ききるように発音します。
沖縄ではラードのことを「ウワァーアンダー」と言い、「ウワァー(豚の)」「アンダ(油)」という意味でラードとなります。
本州では12月は師走と言われ「師(お坊さん)が走るほど忙しい月」と呼ばれていますが、沖縄では「ウワァーショーガチ」と言われていました。
豚が忙しく鳴くからではなく、正月準備に各家庭で豚をシメるから。12月28日ごろから豚をシメて保存食を作る。いたみの早い内臓は丁寧に下処理をして汁にしてお正月の祝い料理に使う。肉は煮しめて、つけ焼きに。あばらはソーキ汁に、三枚肉は塩漬けにして保存食を作っていく。
昔は豚はハレの日の食事だったんです。
現在では、日常的に食べられる食事になりましたが、沖縄料理の成り立ちは、このようなところにあったと言われています。
豚は沖縄へどうやって来たの?
もともと琉球諸島にはリュウキュウイノシシという猪は生育していましたが、豚はいませんでした。14世紀〜17世紀にかけて中国、山東省から船で伝えられたというのが沖縄と豚の歴史の始まりです。
琉球王国を中国皇帝の名において承認するために、たびたび中国からの使者「冊封使(さっぽうし)」が海を渡ってやってきました。
冊封使の使者団は1回で500人ほどの大集団で現れます。一行の航海中の食料として「豚」が連れてこられました。
中国から輸入された当時の豚は、真っ黒で耳の垂れた品種。これが「アーグ」と呼ばれる島豚。純血種としては現在では、存在しませんが、現在の島豚の元になった豚です。
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沖縄の豚の種類
豚は約40日で15kg前後に成長し、半年で100kgを超える、生後6ヶ月で子豚は出荷されていくようです。
そんな豚の品種は世界で100種類にも及びますが、中でも優良品種として飼育されているのが、約30種類前後です。
沖縄でも「アグー」「やんばる島豚」「琉美豚」のような独自の品種が飼われていたりもしますが、「ランドレース」「バークシャー」「大ヨークシャー」「デューロック」「ハンプシャー」などが一般的です。
昔の人が豚の部位別にお店を選んで買っていたというのは、お店ごとに売られている豚の品種の違いが関係していたのかもしれませんね。
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ちなみに、それぞれの豚の特徴はこちら
アグー:低コレステロール、旨味成分(グルタミン酸)が多い、柔らかく、臭みがない
やんばる島豚:豚骨はコクがある、沖縄風味で、独特の味と香りがある
琉美豚:肉に甘みがあり、香りが少ない、スープにするとコクが出る
ランドレース:大型で肉量も多い、多産系
バークシャー:肉質はキメが細かく、柔らかい
大ヨークシャー:大型で肉量も多い、多産系
デューロック:皮下脂肪が厚い
ハンプシャー:三枚肉が綺麗にとれる
沖縄での豚肉の食べ方
沖縄では、ハレの日の食事として食べられてきた歴史があります。お祝い事に食べる調理方法、保存食にする調理方法が代々守られて、沖縄料理として残されています。
最近では一般的になってきた豚食ですが、沖縄っぽい食べ方、お祝いの時に食べる豪華な食べ方が現代でも引き継がれています。
沖縄の豚の丸焼き
クリスマスやお正月など、家族、親族が一同に会する日には、豚の丸焼きが食べられます。昔は豚に串をさして火の上でグルグル回して焼いていたので、1頭焼くのにも8時間ぐらいかかっていたそうですが、最近はガス釜で調理されることが多いです。
4時間かけてじっくり焼き上げる豚は、コクがあり美味しい。「一番美味しいのは、グーヤーヌジ(足の付け根)の部分。レタスに巻いてつけて食べるのがおすすめの食べ方」。皮もパリパリとしていて、美味しく食べることができます。
沖縄でいう「ポーク」とは?
沖縄でポークというと、缶詰のランチョンポーク。ポーク玉子のことを言います。豚肉は「豚肉」、ランチョンポークは「ポーク」といって区別します。
離島などへ行くと、スーパーや商店には冷蔵の肉は売られていません。肉といえば、「冷凍」か「缶詰」が一般的。冷蔵の肉は、人口の多い島か、物流の整った島にしか売ってない。
離島に住むと「肉は冷凍」が常識となります。
缶詰で売られており、高温多湿な地域でも悪くなりにくいポーク缶詰は、離島住民の重要なタンパク源でもあります。ポーク玉子おにぎりや、チャンプルー(炒め物)に使え割れることが多い食材です。
外国から入ってきた食べ物ですが、すっかり沖縄の食生活に定着している食べ物です。
まとめ
沖縄の人々の歴史を振り返ってみると、いろんなことに気付かされます。
もともと、主食がサツマイモだったため、タンパク質と脂肪を摂るために豚肉が食べられるようになった歴史があります。
さらに脂肪を多く摂るために「脂肪のある食材を油を使って仕上げる料理」が発達したり。コレは今でいう「天ぷら」や「揚げ物」「炒め物」として伝えられています。
冷蔵庫がなかったので、豚肉を保存するための調理法が「沖縄料理」になったり。
もともとハレの日の食事だった豚肉。豚肉を食べる習慣があったので、アメリカから輸入された「ランチョンポーク」も県民食といっていいほど受け入れられたり。
様々な要因が重なって、今の沖縄と豚の文化が作られてきたのがよくわかります。
沖縄を旅する時は、そんな側面も見ながら旅すると、新たな発見があって面白いですよ!
それじゃあ、楽しく旅してね!
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